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特論B 細胞の生物学 第8回 タンパク質の多様な働き(再) 和田 勝 東京医科歯科大学教養部 タンパク質のはたらき 種類 役割 例 構造タンパク質 支持 コラーゲンやエラスティンのよ うに組織の形を保つ。ケラチン のように毛髪や爪をつくる 貯蔵タンパク質 アミノ酸の貯蔵 卵白のオボアルブミンやミルク タンパク質のカゼイン 運搬タンパク質 物質の運搬 ヘモグロビンは酸素を運搬 ホルモンタンパク 質 ホルモンとして生体の調 節 インシュリンのようにホルモン としてはたらく 受容体タンパク質 信号分子を受取る ホルモンなどの信号分子と結合 して信号を細胞に伝える 収縮タンパク質 細胞運動 アクチンとミオシンは筋収縮を 担うタンパク質 防御タンパク質 病気から生体を防御 抗体は細菌やウイルスに対抗す る 酵素タンパク質 化学反応を選択的に促進 消化酵素は食物を分解。細胞内 のあらゆる化学反応を触媒する 別のホルモンの例 ここでは、インスリンとは別のホルモ ンの例として、脳下垂体から分泌さ れる生殖腺刺激ホルモンを挙げて みよう。 黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激 ホルモン(FSH)である。 LHとFSH LHとFSHはどちらも、αとβと呼ぶ1 本づつのポリペプチド鎖からなる分 子量およそ3万の二量体(ダイマー) である。 αは共通、βだけが異なる。 糖鎖をもつ(糖タンパク質)。 LHとFSH α鎖とβ鎖とをコードする遺伝子は 別々の染色体上に位置している。 別々に転写されて翻訳され、粗面小 胞体の腔所でアセンブルされる。 ヒトではα鎖の遺伝子は第6染色体、 FSHのβ鎖は第11染色体、LHのβ鎖 は第19染色体上に遺伝子がある。 LH(luteinizing hormone) グリコプロテインホルモン共通α鎖 1 11 21 31 41 51 1 MDYYRKYAAI FLVTLSVFLH VLHSAPDVQD CPECTLQENP FFSQPGAPIL QCMGCCFSRA 61 YPTPLRSKKT MLVQKNVTSE STCCVAKSYN RVTVMGGFKV ENHTACHCST CYYHKS 60 LHβ鎖 1 1 MEMLQGLLLL 61 MMRVLQAVLP 121 GGPKDHPLTC 11 LLLSMGGAWA PLPQVVCTYR DHPQLSGLLF 21 31 41 51 SREPLRPWCH PINAILAVEK EGCPVCITVN TTICAGYCPT DVRFESIRLP GCPRGVDPVV SFPVALSCRC GPCRRSTSDC L 60 120 LH(luteinizing hormone) グリコプロテイン共通α鎖 + LHβ鎖 LH(luteinizing hormone) LH受容体 LHの受容体は ヒトLH受容体(赤い部分はシグナルペプチド、 青い部分は膜貫通ドメイン) 1 61 121 181 241 301 361 421 481 541 601 661 1 MKQRFSALQL VKVIPSQAFR NLPGLKYLSI LYGNGFEEVQ GLESIQRLIA SKQCESTVRK FLRVLIWLIN QTKGQYYNHA RHAILIMLGG IICACYIKIY VTNSKVLLVL SNCKNGFTGS 11 LKLLLLLQPP GLNEVIKIEI CNTGIRKFPD SHAFNGTTLT TSSYSLKKLP VSNKTLYSSM ILAIMGNMTV IDWQTGSGCS WLFSSLIAML FAVRNPELMA FYPINSCANP NKPSQSTLKL 21 LPRALREALC SQIDSLERIE VTKVFSSESN SLELKENVHL SRETFVNLLE LAESELSGWD LFVLLTSRYK TAGFFTVFAS PLVGVSNYMK TNKDTKIAKK FLYAIFTKTF STLHCQGTAL 31 PEPCNCVPDG ANAFDNLLNL FILEICDNLH EKMHNGAFRG ATLTYPSHCC YEYGFCLPKT LTVPRFLMCN ELSVYTLTVI VSICFPMDVE MAILIFTDFT QRDFFLLLSK LDKTRYTEC 41 ALRCPGPTAG SEILIQNTKN ITTIPGNAFQ ATGPKTLDIS AFRNLPTKEQ PRCAPEPDAF LSFADFCMGL TLERWHTITY TTLSQVYILT CMAPISFFAI FGCCKRRAEL 51 LTRLSLAYLP LRYIEPGAFI GMNNESVTLK STKLQALPSY NFSHSISENF NPCEDIMGYD YLLLIASVDS AIHLDQKLRL ILILNVVAFF SAAFKVPLIT YRRKDFSAYT 緑色の部分(細胞外へ突き出た領域の 一部)の構造は、、、 60 120 180 240 300 360 420 480 540 600 660 LH受容体 受容体の一部(細胞の外へ出る部分) LH受容体とリガンドの結合 LH受容体とリガンドの結合 受容体にホルモンが結合、、 情報が細胞の 中に伝えられる ステロイドホルモン生合成 代謝経 路を進 める酵 素を活 性化し て、合 成を進 める。 代謝経路の調節 これと同じようなことが、解糖系でも起 こっている。 肝臓での解糖系の調節は、グルカゴン (抑制)と、インシュリン(促進)による。 この調節と、グリコーゲンへの貯蔵の 調節(グルカゴンは分解、インシュリン は合成をそれぞれ促進)することで血 糖量の調節を行う。 細胞膜 細胞膜 脂質の二重膜(lipid bilayer)である。 細胞膜の構造 電子顕微鏡で観察すると、上の写真 のように二重の膜である。 細胞膜の構成要素 脂質とタンパク質から構成される。 脂質は以下のように分類できる 単純脂質 複合脂質 誘導脂質 トリアシルグリセロールなどの 中性脂肪 グリセロリン脂質、 グリセロ糖脂質など 中性脂肪 H H-C-OH H-C-OH + H-C-OH H O R1-C O O R3-C O O - - H O O H-C-O-C-R1 R2-C-O-C-H H-C-O-C-R3 H O R2-C O - Rは長い 炭化水素 の鎖。途中 に二重結合 を含むこと もある。 リン脂質(phospholipid) フォスファチド(phosphatide)とも言う H O O H-C-O-C-R1 R2-C-O-C-H O H-C-O-P-O-X H OX=コリン、セリン、エタノールアミン、 イノシトールなど フォスファチジルコリン O H R1-C-O-C-H O CH3 H-C-O-P-O-CH2-CH2-N+-CH3 R2-C-O-C-H OCH3 O H 細胞膜の主要な成分 フォスファチジルコリン 頭部 極性 尾部 非極性 のように簡単に あらわすことが できる フォスファチジルコリンを フォスファチジルコリンをぎっしり 並べると、、、 脂質の二重膜 水分子 脂質 二重膜 lipid bilayer 水分子 脂質二重膜の性質 分子の性質 例 透過性 疎水性分子 N2、O2、炭化水素 自由に透過 極性のある 小分子 極性のある 大分子 H2O、CO2、グリセロー ル、尿素 自由に透過 イオンや電荷 を持つ分子 アミノ酸、H+、HCO3-、 Na+、K+、Ca2+、Cl-、 Mg2+ ブドウ糖などの単糖類、 透過できない 二糖類 透過できない 浸透圧 1.溶媒(水) と溶媒+溶質 (水溶液)を 入れる 2.水も溶質 も自由に行 き来できるの で、溶質は 拡散によっ てしだいに左 側へ移動 3.時間が経 つと、両側の 濃度は同じ になる 全透膜 浸透圧 3.半透膜に かかる圧力 と水の移動 しようとする 力がつりあう 1.水と水溶 液を入れる 2.水は半透 膜を通って 移動できる が溶質はで きない 半透膜 4.この圧力 が溶液の浸 透圧に該当 する 浸透圧 この圧力を かけておけ ば、浸透は おこらない 半透膜 脂質二重膜の性質 水のような溶媒分子は自由に通す が溶質は通さない膜を、半透膜 (semipermeable membrane)という。 浸透圧溶血(hemolysis)は、赤血球 膜のこのような性質で説明できる。 溶血の原因は、この他免疫性溶血や毒素 などによる溶血など、多岐にわたる 浸透圧溶血 高張(hypertonic) 低張(hypotonic) 等張(isotonic) 水 縮む 赤 血 球 水 変化なし 破裂 選択透過性 しかしながら、半透膜の性質だけでは 細胞は生きていけない。 細胞の活動にとって必要なグルコー スの取り込み、タンパク質合成の原料 となるアミノ酸の取り込みなど。 そのための通り道が、タンパク質でつ くられている。その結果、選択透過性 (selective permeability)が生じる 膜タンパク質 細胞膜に埋め込まれたタンパク質を、 とくに膜タンパク質と呼ぶ。 膜タンパク質の膜貫通部はαヘリック ス構造で、脂質二重膜と接する部分 の側鎖は疎水性。 αヘリックス構造が何本か束ねられた 構造をとる場合が多い。 脂質二重膜とタンパク質 親水部 αヘリックス 疎水部 親水部 細胞膜のモデル 脂質二重膜に膜タンパク質が浮 かんでいる(流動モザイクモデル) 細胞膜のモデル 膜タンパク質の性質によって、細胞膜 の性質が決まる。 脂質二重膜は海のようなもので、タ ンパク質は氷山のように浮かんで いて、動くことができる。 細胞膜のモデル 膜タンパク質には、貫通型、表在型、 一部埋め込み型がある。 アクチンフィラメントは、表在型タン パク質を介して貫通型タンパク質と 結合できる。 膜タンパク質の外に面した部分から は、糖鎖が出ていることが多い。 細胞膜のモデル 脂質二重膜が流動性を示すのは、脂 質分子が移動できるからである。 コレステロールが埋め込まれると、 膜の流動性が減少する。 グリセロリン脂質以外にも、細胞膜を 構成する脂質がある(セラミドなど)が 今は省略する。 細胞内顆粒の分泌 開口分泌(exocytosis)は、顆粒膜と細 胞膜の融合による。膜タンパク質も 食細胞運動(phagocytosis)はこの 過程の逆で、大きな物質はこうして 細胞内に取り込まれる。 貫通型膜タンパク質の種類 1.細胞間の接着・結合に関するもの 2.チャンネルタンパク質 3.運搬タンパク質 エネルギーを必要としない場合と 必要な場合がある 4.受容体タンパク質 細胞膜を通過させる カリウムイオン この穴を通って + K チャンネルのゲート構造 細胞膜を通過させる グルコース 実際にはこ れは、グリ セロール3-リン酸ト ランスポー ター グルコーストランスポーター 何種類かあり、臓器特異性がある。 そのうちのひとつは、インシュリン 感受性のトランスポーターで、肝 臓で発現している。 細胞膜を通過させる グルコース 血中のグルコースを取り込み、血 糖値を下げる。 チャネルとトランスポーター チャネルとトランスポーターの働きの 違いは、タンパク質の構造の違いに よる。 膜タンパク質が、 こうした膜タンパク質の働きで、細 胞外からの情報を受け取り、細胞 内へ必要な物質を取り込んでい る。