Transcript チーム・オセアニア
Team OCEANIA 2008年度マジュロ環礁調査 山口 徹 ・ 下田 健太郎 ・ 小林竜太 高い島に比べて、オセアニア環礁の歴史生態学的研究は始まったばかりだが、 地球温暖化問題が関心を集めるなかで多様な分野の情報が増えつつある。 地形学、堆積学、海岸工学、リモートセンシング、考古学、文化人類学の学際 的チームがマーシャル諸島で2003年以来おこなってきた調査はその先端例で ある。2008年度8月、KEIOチーム・オセアニアはマーシャル諸島マジュロ環礁 での過酷な調査にふたたび出かける。 東部ミクロネシアに浮かぶマーシャル諸島マジュロは、東西41km・南北11km のラグーンを大小さまざまな州島が取り囲む典型的な環礁である。そのうち西 端に位置するローラは面積1.2km2、最大幅1.2kmをはかり、マジュロ環礁のな かでは、3500mm近い年間降雨量をもっとも多く集める州島である。 調査工程表 行動 日付 8月5日 火 成田15:50 - グアム20:25 (CO007) グアム22:00 - マジュロ04:05 +1 (CO951) 8月6日 水 HPO中心に挨拶回り・調査許可手配 8月7日 木 ローラ巡検・権威者への挨拶・調査同意書手配 8月8日 金 8月9日 土 8月10日 日 8月11日 月 8月12日 火 8月13日 水 8月14日 木 8月15日 金 8月16日 土 8月17日 日 8月18日 月 8月19日 火 8月20日 水 レベル測量・発掘区埋め戻し・挨拶回り 8月21日 木 マジュロ10:55 - ポナペ14:20 (CO957) 8月22日 金 ナンマドール遺跡巡検(サンゴブロック利用の観察) 8月23日 土 ポナペ15:00 - グアム17:20 (CO957) 8月24日 日 グアム12:00 - 成田 14:45 (CO006) 山口・吉田・小林:MJ-Lr3-1, MJ-Lr4-1 (Seion)発掘区設定→発掘 棚橋・下田・高橋:ローラ植生分布調査 休日 山口・吉田・小林・伊藤:MJ-Lr3-1, MJ-Lr4-1発掘区設定→発掘 棚橋・下田・高橋:ローラ植生分布調査 ※伊藤:8/13 04:05 (CO951)マジュロIN ※高橋:8/13 16:30 (CO952)マジュロOUT 山口・下田・伊藤:モツ踏査・小規模発掘 吉田・小林:MJ-Lr3-1発掘 棚橋:聞取調査・アーカイブス調査 延べ台数・人数 * エコノミー割引航空運賃(15日間有効)・・・\126,000 * その他諸費用・・・¥28,280 ((内訳)) ・ 燃油特別付加運賃・・・¥21,000(暫定) ・ 航空保険料・・・¥1,250 ・ 成田空港使用料・・・¥2,040 ・ グアム乗換地空港税・・・¥3,990 地下に形成された淡水レンズは、州島内陸での根茎類栽培を支える。マジュロ環礁で は特に、ジャイアント・スワンプ・タロと呼ばれるミズズイキ類が栽培されており、ココヤシ やパンノキとともに重要な食料資源であった。根茎類の栽培は、ローラ州島内陸に点在 するピット状の耕地でおこなわれている。 耕地は地下水レンズの水頭まで掘り込まれ、その周りに廃土が積上げられ堤状の地形 が形成されている。 廃土堤の上には、ココヤシやパンノキの高木、ナンヨウイヌジシャやハスノハギリ、オオ ハマボウが繁茂する。周辺の樹木は耕地に緑陰をもたらし、土壌をつくるための緑肥と なり、また収穫のときには堀棒の材(オオハマボウ)として利用される。 起伏の連なりと豊かな植生からなるピット耕地の複合景観は、低平で一様な環礁のイ メージとは対極的である。この景観の形成の歴史解明が本研究の目的である。 ピット耕地の構築にかかわる地形改変に ついては、植生史以上にかなりのデータ が得られている。 現在のローラ州島には、大小さまざまな 195基のピット耕地が分布する。(35-7000 ㎡、500平方メートル以下の耕地がもっとも 多い。) 根茎類が栽培される耕地底面は海抜40 -60cmほどで、周囲に積み上げられた廃 土の堤は高いところで3.0mを測る。 州島中央部ではこうした起伏が連続し、 もっとも密集する7Cグリッドでは面積の半 分が耕地で占められる。 マジュロ環礁に行くには?(上:航空券・下:ホテル) 世界で最古の環礁の遺跡 ローラ州島におけるピット耕地の分布 自然堆積の砂層直上から検出された地床炉からは、BP2000年にさかのぼる年代が得ら れた。オセアニア環礁で最古の居住年代で、完新世後期の海面低下後に出現したばか りの州島陸地で、人間の居住がはじまっていたことを示す。